何気ない会話を頻繁なメールで交わす日々が始まった。
会った事ですぐに砕ける会話を交わすようになったわけではなかったけれど、それはそれで彼の人柄がにじみ出る言葉ばかりだった。
残念なことに、私の不注意で彼とのメールが携帯から消えてしまった。
だから詳細は全く残ってなくて、こうしてブログに書きたいなと思った時に振り返るメールがないからかなりショックだ。
でも過去を振り返るよりも今は、毎日届く彼からのメールがそんなショックをかき消してくれている。
初めてのデートからわずか一週間。
夜勤明けに会おうという約束を交わした前日。
桜を見に行こうという話になった。
『どこでお花見したい?』
携帯メールのやり取りになる前にメッセージで彼が教えてくれた桜の名所を思い出した。
そこへ行きたい。
『車がないと無理だよ?』
大丈夫。私が運転するから。
夜勤明けの仕事帰り、その日はまるで二人がお花見デートを歓迎するような五月晴れのような晴天だった。
慣れない運転も、彼が助手席ならば大丈夫だと思えた。
途中のファミレスでお昼を食べてから桜の名所に向かった。
到着した途端に目に飛び込んでくる桜のトンネル。
彼は私の手を繋ぎ、桜のトンネルのスタート地点に立たせてくれた。
ここから桜のトンネルが1キロ続く。
手を繋いでゆっくり歩くピンクのトンネル。
沢山の人がいたけれど、ただただ満開の桜のトンネルに圧倒された。
しばらく歩くと、トンネルの左下に一面の菜の花の畑が目に飛び込んできた。

トンネルから菜の花畑に降り、菜の花の香りに誘われながら彼と手を繋いで黄色いジュータンを歩いた。
どこまでもどこまでも続く菜の花のジュータン。
私が大好きな黄色。
それが一面に広がっている。
時折軽く吹く風になびく菜の花の大群。
その奥に続く桜並木のピンク色。
空は青くて、どこまでも広くて。
彼の横顔と、振り返るとその景色は一面の黄色。
ただただ感動している私。
菜の花畑の中を歩き、再び桜のトンネルの中に戻り、繋いだ手に寄り添って上を見上げた。
青空の下に揺れるピンクの桜。

来たかった場所に、好きな人と来れた喜びは最高の幸せと、最高の思い出として胸に刻まれた。
帰りの車の中はもう恋人気分だった。
途中の川原で日暮を迎えて、携帯に落としていたドリカムのアルバムがBGMになった。
急に甘えてきた彼に戸惑いながらも、言葉のない時間に彼の気持ちを感じていた。
キスは好きだよの言葉の代わり。
愛しているの言葉の代わり。
そうはわかっていたけれど、私は彼の口からちゃんと確信できる言葉が聞きたくて『私のこと好き?』と聞いてみた。
消えそうな、聞こえにくい声で恥ずかしそうに『好きだよ。』と彼が呟いた。
『ん?』と聞き返しても、2度目の好きの言葉はなくて『お気に入り』と笑って答える彼がいた。
それが彼からもらった最初の愛の言葉。
なのに私は『ブックマーク!?』と思わずつっこんでしまった。
ケラケラ笑いながら彼は何度か『お気に入り』と答えた。
お気に入り。
お気に入り。
黄菜子がお気に入り。
お気に入りという言葉にピンとこない私。
その時はまだ、好きとか愛しているという言葉が最高の愛情表現だと思い込んでいた私は、お気に入りという言葉が彼の最高の愛情表現だと気付いていなかった。